
- カラシとマスタードの最大の違いは「原料の種」と「作り方」
- カラシはツーンと鼻に抜ける「和」の辛さ
- マスタードは酸味や風味が豊かな「洋」の辛さ
- おでんにはカラシ、ソーセージにはマスタードが基本
- 種類によって辛さや食感が全く違うので使い分けが肝心
- 違いを知れば、いつもの料理がもっと美味しく楽しくなる
マスタードとカラシ、この2つは同じようですが、大きな違いがあります。
都内で洋食店を営むシェフのケンジです。
以前、僕は二つの違いを曖昧なまま料理に使って失敗しました。
この記事では、そんな僕の経験も踏まえ、
和のカラシと洋のマスタードの風味や特性、
プロの使い分け術までを分かりやすく解説します。
この記事を読めば、あなたの料理のレパートリーがぐっと広がること間違いなしです!
カラシとマスタードの決定的な3つの違い

ややこしく考えがちなこの問題、答えはとてもシンプルです。
カラシとマスタードの根本的な違いは、たった3つのポイントに集約されます。
違い①:原料の「カラシ菜」の種類が違うんです
ふと、双子だと思っていたら実は他人だった、なんてことがありますよね。
まさにカラシとマスタードの関係がそれです。
どちらも「カラシ菜」というアブラナ科の植物の種から作られますが、
その「種の種類」が全く異なります。
カラシ(和がらし) | マスタード(洋がらし) | |
---|---|---|
原料 | オリエンタルマスタードシード | イエローマスタードシード、ブラウンマスタードシードなど |
特徴 | ツーンと鼻に抜ける、非常に強い辛味 | 辛味はマイルド、豊かな風味 |
- カラシ(和がらし)の原料
- オリエンタルマスタードシードという種類の種から作られます。
- この種は、ツーンと鼻に抜ける、非常に強い辛味成分を持っているのが最大の特徴です。日本の食卓に欠かせない、あの刺激的な辛さの源はこれだったのですね。
- マスタード(洋がらし)の原料
- イエローマスタードシードやブラウンマスタードシードといった種が使われます。
- オリエンタル種に比べると、辛味はマイルド。その代わり、豊かな風味を持っているのが特徴です。
原料の種が違うから、味も香りも全くの別物になる。これが第一のポイントです。
違い②:作り方が全く異なる!味の決め手はコレ
種の次に重要なのが、どうやってペーストにするか、という「作り方」です。
味の方向性を決定づける、とても大切な工程なんですよ。
- カラシの作り方
- 種を粉末にして、「水」か「ぬるま湯」で溶くだけ。非常にシンプルです。
- これにより、種が持つ辛味成分がダイレクトに引き出され、あの強烈な「ツーン」が生まれます。他の味を加えない、いわば引き算の美学ですね。
- マスタードの作り方
- 種を粉にしたり、粗く潰したりしたものに、「お酢(ビネガー)」や「ワイン」「砂糖」「ハーブ」などを加えて練り上げます。
- お酢やワインを加えることで、辛味がマイルドになり、爽やかな酸味と複雑な風味がプラスされます。こちらは足し算の美味しさと言えるでしょう。
何を加えて練るか。この違いが、カラシとマスタードのキャラクターを決定づけているのです。
違い③:見た目と食感もこんなに違う
最後に、見た目と食感の違いです。料理の仕上がりにも影響しますよね。
- カラシ
- きめ細かくすり潰されているため、滑らかなペースト状です。
- 色は鮮やかな黄色をしています。
- マスタード
- 種の皮をそのまま残した「粒マスタード」は、プチプチとした食感が楽しめます。
- 滑らかなペースト状の「ディジョンマスタード」など、種類が豊富です。
- 色も、淡い黄色から濃い茶色まで様々です。
さて、この違い、イメージできたでしょうか?
【実践編】料理で迷わない!カラシとマスタードの使い分け術

違いが分かったところで、いよいよ実践編です。
「で、結局どっちを使えばいいの?」という疑問に、プロの視点でお答えします。
カラシが主役!日本の定番料理と最高の相性
ツーンと力強い辛さを持つカラシは、日本の家庭料理の名脇役です。
- おでん、シュウマイ、豚の角煮
- これらの料理に共通するのは、醤油ベースの優しい味わいや、豚肉の脂の甘み。
そこにカラシの強い辛さが加わることで、味がキリッと引き締まり、
脂っこさがリセットされます。口の中がさっぱりして、また次の一口が進むのです。
- これらの料理に共通するのは、醤油ベースの優しい味わいや、豚肉の脂の甘み。
私の失敗談から得た教訓① 開店当初、豚の角煮に少しオシャレに見せようと粒マスタードを添えてお出ししたことがありました。
すると常連さんから「マスター、角煮は美味しいけど、いつものカラシの方が合うなぁ。
なんか味がぼやけるよ」と指摘されたのです。マスタードの酸味が、角煮の甘いタレと喧嘩してしまったんですね。
この経験から、料理の「締めどころ」には、カラシの持つストレートな辛さが不可欠だと痛感しました。
マスタードが大活躍!洋食がもっと美味しくなる使い方
酸味と豊かな風味を持つマスタードは、肉料理との相性が抜群です。
- ソーセージ、ホットドッグ、サンドイッチ
- ソーセージやパテの脂っこさを、マスタードの酸味が爽やかに中和してくれます。
また、種やハーブの複雑な風味が、シンプルな肉料理に奥行きを与えてくれるのです。
特に粒マスタードは、見た目も華やかになりますよね。
- ソーセージやパテの脂っこさを、マスタードの酸味が爽やかに中和してくれます。
ちょっと意外?カラシとマスタードの応用レシピ
定番以外にも、こんな使い方ができますよ。
- カラシの応用
ポテトサラダにほんの少しだけ加えると、味がぼやけず、全体の輪郭がはっきりします。マヨネーズとの相性も抜群です。 - マスタードの応用
鶏もも肉に粒マスタードとハチミツ、醤油を塗って焼くだけで、絶品オーブン焼きが完成します。子供も喜ぶ甘じょっぱい味になりますよ。
あなたはどれが好き?カラシとマスタードの種類を徹底解説

「マスタード」と一括りに言っても、実はたくさんの種類があります。
代表的なものを知っておくと、選ぶのがもっと楽しくなります。
日本の食卓の相棒「和がらし」
粉末状の「粉からし」を水で溶いたもの。チューブ入りの「練りからし」が一般的ですね。
とにかくストレートな辛さが特徴で、日本の繊細な味付けを引き立てる力を持っています。
マスタードの基本「洋がらし(イエローマスタード)」
ホットドッグにかかっている、鮮やかな黄色のマスタードです。
辛さは非常にマイルドで、酸味が効いています。
お子様でも食べやすい、最も基本的なマスタードと言えるでしょう。
プチプチ食感が楽しい「粒マスタード」
ブラウンマスタードシードなどを、皮ごと粗挽きにして作られます。
プチプチとした食感と見た目のアクセントが人気。
ソーセージやステーキだけでなく、ドレッシングに混ぜるのもおすすめです。
上品でクリーミー「ディジョンマスタード」
フランスのディジョン地方が発祥の、ワインビネガーを使った滑らかなマスタード。
辛味と酸味のバランスが良く、洗練された上品な味わいです。
サンドイッチやソース作りに使うと、一気に本格的な味になります。
私の失敗談から得た教訓② まだ私が料理人になるずっと前、小学生の頃の話です。
母が作ったサンドイッチに、いつもと違う黄色のソースが入っていました。
ホットドッグのマスタードだと思ってかぶりついたら、ツーン!と強烈な辛さが鼻を突き抜け、涙目に。それは母が間違えて和がらしを塗ってしまったサンドイッチでした。
この経験で、同じ黄色いペーストでも全く別物なのだと、身をもって知りました(笑)。
【関連キーワード解説】カラシとマスタードの気になるアレコレ

カラシとマスタードの栄養やカロリーに違いはある?
どちらも主な原料は植物の種なので、栄養価やカロリーに劇的な差はありません。
ただし、マスタードは製品によって砂糖や油分が多く含まれることがあるため、
カラシに比べて少しカロリーが高くなる傾向があります。
とはいえ、一度に大量に使うものではないので、風味や料理との相性で選ぶのが良いでしょう。
練りからしと和からしの違いって何?
これはよくある質問ですね。「和からし」というのは、
オリエンタルマスタードシードから作られた「粉末そのもの」を指すことが多いです。
一方、「練りからし」は、その粉末を水やぬるま湯で溶いて、
すぐに使えるペースト状にした製品のことです。
スーパーでよく見るチューブ入りのものは「練りからし」にあたります。
マスタードの代用としてカラシは使える?
料理に「辛味」だけを足したい、という目的であれば、ごく少量で代用することは可能です。
しかし、マスタードが持つ「酸味」や「豊かな風味」はカラシにはありません。
もし代用するなら、お酢やレモン汁を少し加えて酸味を補うと、少しだけ雰囲気が近づきます。
逆もまた然り。カラシの代わりにマスタードを使うと、
酸味が加わり料理の印象が変わってしまうので注意が必要でしょう。
【Q&A】カラシとマスタードの素朴な疑問を解決!

Q. なぜカラシはツーンと鼻にくるの?
A. カラシの辛味成分「アリルイソチオシアネート」は、揮発性(蒸発しやすい性質)が高いからです。
口に入れると体温で気体になり、鼻の奥の粘膜を直撃するため、
あの独特のツーンとした感覚が生まれます。科学的な根拠は農林水産省のウェブサイトなどでも解説されています。
Q. マスタードの粒々は何ですか?
A. マスタードシード(カラシ菜の種)の皮です。粒マスタードは、
この皮をあえて残すことで、独特の食感と風味を生み出しています。
Q. 開封後の保存方法は?
A. カラシもマスタードも、開封後は必ず冷蔵庫で保存してください。
特にカラシは、空気に触れると辛味や風味が飛びやすいので、キャップをしっかり閉めることが大切です。
Q. 辛すぎる時の和らげ方は?
A. マヨネーズやハチミツ、ヨーグルトなど、乳製品や甘みのあるものと混ぜると辛味がマイルドになります。
ソースやドレッシングを作る際に試してみてください。
まとめ
カラシとマスタードの違い、そして魅力が伝わったでしょうか。
最後に、今日のポイントをもう一度おさらいしましょう。
- カラシとマスタードは、原料となるカラシ菜の種の種類が違います。
- カラシは水で溶くだけで、ツーンとした強い辛さが特徴です。
- マスタードはお酢やワインなどを加え、酸味と豊かな風味があります。
- 和食にはキレのあるカラシ、洋食には風味豊かなマスタードが基本です。
- おでんや角煮にはカラシが、ソーセージやサンドイッチにはマスタードが合います。
- マスタードには粒マスタードやディジョンマスタードなど種類が豊富です。
- 違いを理解すれば、代用する時も工夫ができるようになります。
- それぞれの特徴を知ることで、料理の幅がぐっと広がります。
- 辛味成分の違いが、鼻に抜けるか舌で感じるかの違いを生みます。
- これからは自信を持って、二つのスパイスを使い分けてみてください。
調味料一つで、いつもの食卓はもっと豊かで楽しいものになります。
今日からぜひ、カラシとマスタードを意識して手に取ってみてくださいね。
あなたの料理ライフが、さらに素敵なものになることを願っています!
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