
- とちの実を食べるには、丁寧なアク抜きが絶対に必要です
- アク抜きは重曹を使えば、家庭でも意外と簡単にできます
- アク抜きの完了は、味見をして渋みが完全に消えたかで判断します
- 定番のとち餅以外にも、クッキーや炊き込みご飯など多彩な食べ方があります
- 生の実は長期保存できないため、すぐにアク抜きするか冷凍保存しましょう
- 山で拾う際は、食べられるドングリとの見分けに注意が必要です
【完全ガイド】とちの実の食べ方|アク抜きから絶品レシピまで!
はじめに:奥深い「とちの実」の世界へようこそ
「とちの実」と聞くと、どこか懐かしく、素朴な味わいを思い浮かべる方も多いかもしれませんね。
独特の風味とほろ苦さは、一度食べると忘れられない魅力があります。
しかし、「食べてみたいけど、アク抜きが難しそう…」「どうやって調理すればいいの?」と、一歩を踏み出せないでいませんか?
実は私自身、初めてとちの実のアク抜きに挑戦した時、見事に失敗してしまった経験があるんです。
渋みが全く抜けず、「これは食べ物じゃない…」と愕然としたのを今でも覚えています。
この記事では、私の失敗談から学んだ「誰でも失敗しないアク抜きの方法」から、
定番のとち餅、そして意外なアレンジレシピまで、とちの実の食べ方を余すところなくご紹介します。
とちの実の食べ方の基本|全ては「アク抜き」から始まる
とちの実を美味しく食べるための答えは、「丁寧なアク抜き」、これに尽きます。
拾ってきたばかりのとちの実には、「サポニン」や「タンニン」といった強い渋み成分(アク)が大量に含まれており、そのままでは絶対に食べられません。

このアクを根気よく抜くことで、初めてあの独特の風味と旨味が顔を出します。
アク抜きさえ乗り越えれば、もちもちの「とち餅」や香ばしいお菓子など、様々な料理に変身させることができるのです。
なぜアク抜きが必要?とちの実の渋みの正体
とちの実の強烈な渋みは、植物が動物から種を守るための自然な防御機能です。
この渋み成分であるサポニンやタンニンは、食べ過ぎるとお腹を壊す原因にもなります。
大昔の縄文時代の人々も、このとちの実を大切な食料としていましたが、川の水に長時間さらすなど、知恵を絞ってアクを抜いていました。
美味しいとちの実を食べることは、先人たちの知恵を受け継ぐことでもあるんですね。
【失敗談】私が最初に挑戦したときのアク抜き大失敗
私が初めてとちの実を手に入れたのは、旅先の産直市でした。見た目の可愛さに惹かれ、軽い気持ちで調理を始めたのです。
ネットで調べた通り、何日か水に浸して、皮をむいて、重曹で煮て…と進めました。
しかし、完成したものを一口食べて愕然。口の中に広がる、とてつもない渋みとエグみ。
「これは無理だ…」と、泣く泣く全て捨ててしまいました。原因は、水に浸す時間と重曹で煮る時間の両方が圧倒的に足りなかったこと。
見た目ではアクが抜けたかどうかわかりにくく、味見を怠ったのが最大の敗因でした。
この経験から、とちのアク抜きは「急がば回れ」が鉄則だと学びました。
【完全ガイド】家庭でできる!重曹を使ったとちの実のアク抜き方法
伝統的な木灰を使う方法は本格的ですが、現代の家庭では少しハードルが高いですよね。
そこで、一番手軽で失敗しにくい「重曹」を使ったアク抜き方法を、手順を追って詳しく解説します。

準備するものリスト
- とちの実
- 水
- 重曹(食用)
- 大きな鍋(ステンレスかホーロー製がおすすめ)
- ボウル
- ザル
- ゴム手袋(皮むき時に手が黒くなるのを防ぐため)
手順1:鬼皮と渋皮を剥くコツ
- とちの実をたっぷりの水に1週間~10日ほど浸します。毎日水を替えましょう。こうすることで皮が柔らかくなり、剥きやすくなります。
- 水に浸したとちの実を鍋に入れ、火にかけます。沸騰する直前で火を止め、少し冷まします。
- 熱いうちに、包丁や専用の皮むき器で硬い鬼皮(外側の皮)を剥きます。火傷に注意してください。
- 鬼皮を剥いたら、内側の渋皮もきれいに剥き取ります。この作業が一番根気がいりますが、丁寧に行うことで仕上がりが格段に良くなります。
手順2:重曹を使ったアク抜き
- 皮を剥いたとちの実を鍋に入れ、たっぷりの水を注ぎます。
- 水1リットルに対して、重曹大さじ1杯程度を加えます。
- 火にかけて沸騰したら弱火にし、30分ほど煮ます。煮汁が茶色く濁ってきたら、一度お湯を全て捨てます。
- この「重曹を加えて煮て、お湯を捨てる」作業を、煮汁が透明に近くなるまで5~10回以上繰り返します。回数はとちの実の状態によって大きく変わります。
引用元情報
伝統的な食文化としてのとちの実の利用法については、農林水産省のウェブサイトでも紹介されています。木灰を用いる古来の方法など、より深い知識を得たい方は参考にしてみてください。
引用元: 農林水産省 うちの郷土料理「栃もち」
アク抜き完了のサインの見分け方
見た目だけでは、アクが完全に抜けたか判断するのは難しいです。
一番確実な方法は、数回煮こぼした後に、とちの実のかけらを一つ取り出し、水でよく冷ましてから実際に食べてみることです。
少しでも渋みやエグみを感じる場合は、まだアクが残っています。根気よく煮こぼしを繰り返しましょう。
「もういいかな?」と思ってから、あと2回は繰り返すくらいの気持ちが大切です。
アク抜き後のとちの実の美味しい食べ方レシピ5選
苦労してアク抜きしたとちの実は、まさに格別の味わいです。
ここでは、定番から意外なアレンジまで、おすすめの食べ方をご紹介します。
定番!もっちり絶品「とち餅」の作り方

とちの実の食べ方と言えば、やはり王道の「とち餅」です。
独特の香りとほろ苦さが、あんこやきな粉と絶妙にマッチします。
- もち米を洗い、一晩水に浸しておきます。
- アク抜きしたとちの実を細かく刻むか、フードプロセッサーでペースト状にします。
- もち米の水を切り、とちの実と混ぜ合わせ、蒸し器で蒸し上げます。
- 蒸しあがったものを、すりこぎなどで粘りが出るまでつけば完成です。あんこを絡めたり、きな粉と黒蜜をかけたりしてお楽しみください。
香ばしさがクセになる「とちの実クッキー」

とちの実のほろ苦さは、クッキーなどの焼き菓子とも相性抜群です。
香ばしさが引き立ち、大人のおやつにぴったりです。
- アク抜きしたとちの実を細かく刻み、軽く煎っておきます。
- いつものクッキー生地に、刻んだとちの実を混ぜ込んで焼き上げます。
- ナッツのような食感と、ほんのりとした苦みがアクセントになり、後を引く美味しさです。
【体験談】我が家で一番人気!とちの実入り炊き込みご飯
これは私が試した中で、特に家族に好評だった食べ方です。いつもの炊き込みご飯に、アク抜きしたとちの実をゴロッと入れて炊くだけ。
ホクホクとした食感は栗のようでもあり、それでいて独特の深い風味がご飯全体に広がります。
鶏肉やきのこ、油揚げなど、どんな具材ともよく合います。お米2合に対して、アク抜きしたとちの実を5~6個ほど入れるのがおすすめです。
冷めても美味しいので、おにぎりにするのも最高ですよ。
おやつにぴったり!とちの実の甘露煮
アク抜きしたとちの実を、砂糖と醤油、みりんで甘辛く煮詰めます。箸休めやお茶うけにぴったりの一品です。
じっくり煮込むことで味が染み込み、ねっとりとした食感が楽しめます。
保存も効くので、たくさんアク抜きした際にぜひ試してみてください。
【意外なアレンジ】とちの実入りパウンドケーキ
刻んだとちの実をパウンドケーキの生地に混ぜ込んで焼くと、しっとりとした生地の中に、とちの実の食感と風味がアクセントとなり、非常におしゃれなスイーツになります。
ラム酒などのお酒を少し加えると、さらに風味が引き立ち、大人の味わいになります。
とちの実の入手方法と選び方のコツ
美味しいとちの実料理を作るには、良い実を手に入れることも大切です。
山で拾う際の注意点(時期、場所、見分け方)
とちの実は、9月下旬から10月頃にかけて熟して自然に落果します。
沢沿いや湿った場所に多く自生しています。拾う際は、クマなどの野生動物に十分注意してください。
また、カシやナラなどの食べられないドングリと間違えないようにしましょう。
とちの実は、他のドングリに比べて丸く、大きいのが特徴です。
直売所や通販で選ぶポイント
自分で拾うのが難しい場合は、秋になると道の駅や産直市で売られていることがあります。
選ぶ際は、粒が大きく、ずっしりと重みがあり、傷や虫食いの穴がないものを選びましょう。
最近では、アク抜き済みのとちの実がネット通販で手軽に購入できるので、初心者の方はこちらから試してみるのも良い方法です。

引用元情報
とちの実の産地や地域ごとの利用法については、各地方自治体の観光情報サイトが参考になります。
例えば、とち餅が名産である山形県の観光情報サイトなどを見ると、現地の文化に触れることができます。
引用元: やまがたへの旅/山形県公式観光サイト
知っておきたい!とちの実に関する豆知識
とちの実の栄養価と期待できる効果
とちの実は、縄文時代から食べられてきたスーパーフード。炭水化物を主成分としながら、ビタミンB群やミネラルも含まれています。
また、渋み成分であるサポニンやタンニンはポリフェノールの一種で、近年その健康効果が注目されています。
引用元情報
とちの実の栄養成分については、農林水産省の栃餅(とちもち)で公開しています。成分値も掲載されており、信頼性の高い情報源です。
引用元:農林水産省の栃餅(とちもち)
とちの実の旬の時期と保存方法
とちの実の旬は、実が落ちる秋です。生のままのとちの実は水分が多く、カビが生えやすいため長期保存には向きません。
拾ってきたら、なるべく早く水に浸してアク抜き作業を始めましょう。
【失敗談】保存方法を間違えてカビが…正しい冷凍・冷蔵術
アク抜きを終えたとちの実も、実はあまり日持ちしません。
以前、アク抜きが終わった実をタッパーに入れて冷蔵庫で保存していたら、
数日で表面に白いカビが生えてしまい、がっかりしたことがあります。
アク抜き後のとちの実は、小分けにしてラップに包み、ジッパー付きの保存袋に入れて冷凍するのが最もおすすめです。
こうすれば、1年近くは風味を損なわずに保存できます。使うときは、自然解凍するか、凍ったまま調理に使えます。
【関連記事の解説】とちの実の食べ方の疑問を解決
とちの実のアク抜き期間はどのくらい?
とちの実のアク抜きにかかる期間は、最初の水に浸す工程で1週間~10日、その後の皮むきと煮こぼし作業で丸1日~2日ほどかかります。
とちの実の状態や量によって変わりますが、かなりの時間と根気が必要な作業です。
焦らずじっくり取り組むことが、美味しく仕上げる一番の近道となります。
とちの実はどこで拾える?
とちの木は、北海道から九州まで、日本全国の山地の谷沿いや湿った場所に自生しています。
特に、ブナ林などが残る自然豊かな森で見つけることができます。
公園などに植えられていることもありますが、採取が禁止されている場合が多いので注意が必要です。
山で拾う際は、その土地のルールを確認し、マナーを守りましょう。
とち餅の作り方は?
とち餅の基本的な作り方は、アク抜きしたとちの実をペースト状にし、蒸したもち米と一緒につくことです。
とちの実ともち米の割合はお好みですが、一般的にはもち米1kgに対して、アク抜き後のとちの実を200g~300g程度混ぜ込むと、風味豊かに仕上がります。
詳しいレシピは本文で紹介しています。
とちの実は縁起が悪いって本当?
「とちの実は縁起が悪い」という話は、一部の地域での迷信や俗説のようです。
名前の語呂合わせや、アク抜きの苦労からそう言われるようになったのかもしれません。
しかし、多くの地域では縄文時代から続く貴重な保存食であり、飢饉を救った「救荒作物」として大切にされてきました。
縁起物として扱う地域も多いです。
とちの実の食べ方に関するよくある質問(Q&A)
Q1. アク抜きで重曹を入れすぎるとどうなりますか?
A1. 重曹を入れすぎると、とちの実自体が溶けてドロドロになってしまうことがあります。
また、重曹の苦みが実に残ってしまう可能性もあります。水1リットルに対して大さじ1杯程度を目安にし、入れすぎないように注意してください。
Q2. 皮を剥くのがとても大変です。簡単な方法はありますか?
A2. 最初に水に浸す期間を長めに取ると、皮がふやけて剥きやすくなります。
また、鬼皮を剥く際は、沸騰直前のお湯で温めることで、より剥きやすくなります。
専用の「とちの実割り器」という道具もありますので、たくさん処理する場合は利用を検討するのも良いでしょう。
Q3. アク抜き済みのとちの実が売っていますが、味は違いますか?
A3. はい、売っています。アク抜き済みのものは、手間がかからないので非常に便利です。
味は、加工する職人さんの技術によって様々ですが、一般的に丁寧にアク抜きされており、美味しく食べられます。
初めての方は、まず市販のアク抜き済み商品から試してみて、とちの実の味を知るのもおすすめです。
まとめ
- とちの実を食べるためには、必ず丁寧なアク抜きが必要です。
- 生のままでは、強い渋みとエグみがあるため絶対に食べられません。
- 家庭でのアク抜きには、手軽な重曹を使う方法がおすすめです。
- アク抜きは、水に1週間以上浸した後、何度も煮こぼす作業を繰り返します。
- アクが抜けたかの最終判断は、必ず味見をして確認してください。
- 定番の食べ方は、もち米と一緒につく「とち餅」です。
- クッキーや炊き込みご飯、パウンドケーキなど洋風の食べ方にも合います。
- とちの実は秋に旬を迎え、山地の沢沿いなどで拾うことができます。
- 生の実は日持ちしないため、すぐにアク抜きするか冷凍保存しましょう。
- アク抜き後の実を長期保存する場合は、冷凍するのが最も確実です。
- アク抜きには時間と手間がかかりますが、その分、完成した時の喜びは格別です。
- 先人たちの知恵が詰まった、奥深いとちの実の味わいをぜひ楽しんでください。

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