
- 「風邪をうつす」の正しい漢字は「移す」一択
- 「写す」「映す」などは意味が異なるため誤用
- 「伝染る」「感染る」は当て字であり公用禁止
- ウイルスが「移動する」イメージを持つと覚えやすい
- ビジネスメールでは漢字よりも気遣いの表現が重要
- 故意に風邪をうつすと傷害罪になるリスクがある
風邪をうつすの漢字は「移す」が正解!
「風邪をうつしてしまったかもしれない」 「風邪がうつるのを防ぎたい」
メールやLINEでこう書こうとしたとき、変換候補にたくさんの「うつす」が出てきて迷ったことはありませんか?
間違った漢字を使って、相手に「教養がない」と思われたくはないですよね。
正しい日本語を知って、自信を持って文章を書けるようになりましょう。
「風邪をうつす」は漢字で「移す」と書くのが正解
風邪や病気を他人に感染させるという意味で使う場合、正しい漢字は「移す」 です。
正解は=移す
大手辞書サイトの定義を見ても、「風邪を移す」という用例が明確に記載されています。
うつす【移す】
- 位置を変える=場所を移す
- 伝染させる。「風邪を移す」
これ以外に正解はありません。
公的な書類、ビジネスメール、学校への連絡帳など、あらゆる場面で「移す」を使えば間違いありません。
また、文化庁が告示している「常用漢字表」においても、「移」は小学5年生で習う学習漢字として登録されており、公用文での使用が推奨されています。
なぜ「移す」という字を使うのか?
覚え方は非常にシンプルです。
「移」という漢字には、「移動(いどう)」 という言葉がある通り、「ある場所から別の場所へ動く」という意味があります。
風邪の原因であるウイルスや細菌が、「私の体」から「あなたの体」へ移動する イメージを持ってください。
- 住所を移す(引越し)
- 席を移す(席替え)
- 実行に移す(行動のフェーズを変える)
これらと同じく、ウイルスが場所を変えるので「風邪を移す」なのです。
迷ったときは「ウイルスが移動するから、移す!」と思い出してください。
間違いやすい「うつす」の漢字と意味の違い
パソコンやスマホで「うつす」と入力すると、他にもたくさんの漢字変換候補が出てきます。
しかし、これらは風邪の場合には使いません。
それぞれの意味を知っておくと、誤用を完全に防ぐことができます。
1. 写す(コピーする)
写す(うつす)は、文章や絵などを書き写したり、写真を撮ったりするときに使います。
「写真」や「複写」の「写」ですね。
- 黒板の文字をノートに写す
- 風景を写真に写す
風邪をコピーして増やすわけではないので、これは使いません。

2. 映す(投影する)
映す(うつす)は、光や姿などを画面や鏡に反映させるときに使います。
「映画」や「上映」の「映」です。
- 鏡に自分の姿を映す
- スクリーンにスライドを映す
これも風邪のウイルスとは関係がありません。

3. 遷す(場所や地位を変える)
遷す(うつす)は、少し難しい漢字ですが、「移す」と似た意味を持っています。
「変遷(へんせん)」や「遷都(せんと)」などで使われ、場所や地位が変わることを指します。
実は、古い文学作品などでは、病気がうつることを「遷す」と書く例もありました。
しかし、現在では常用漢字の範囲で「移す」を使うことが一般的です。
「遷す」を使うと、相手に「読みづらい」「気取っている」という印象を与えかねないので、現代では避けたほうが無難です。
「伝染る」「感染る」は使ってもいい?
最近よく見かけるのが、「伝染る」や「感染る」という表記です。
これらは、どう扱うべきでしょうか。
これらは「当て字」です
結論から言うと、これらは常用漢字表にはない「当て字」 です。
本来、「伝染(でんせん)」や「感染(かんせん)」は音読みする熟語であり、送り仮名を送って「うつる」とは読みません。
しかし、意味が直感的にわかりやすいため、小説や歌詞、漫画などの創作物では演出として使われることがあります。
特に有名なのは、吉田戦車さんのギャグ漫画『伝染るんです。(うつるんです)』でしょう。
この作品のヒットにより、「伝染る」という表記が世間に広く認知されるようになりました。
公的な場面ではNG、親しい間柄ならOK
使用の基準としては、以下のようになります。
- ビジネス・学校・役所など: 絶対に使わない(誤字とみなされます)
- 友人とのLINE・SNS・個人の日記: 使ってもOK(ニュアンスは伝わる)
「風邪が感染(うつ)っちゃってさ〜」と友人に送るのは問題ありませんが、上司へのメールで書くと「漢字も知らないのか」と思われてしまうリスクがあります。
TPOに合わせて使い分けましょう。
ビジネスで「風邪をうつした」と伝えたい時のマナー
社会人になると、「風邪を移してしまったかもしれない」と謝罪しなければならない場面が出てきます。
ここで大切なのは、漢字が合っているかどうか以上に、相手への気遣い です。
直接的な表現は避けるべき?
実は、ビジネスメールにおいては「風邪を移してしまい、申し訳ありません」という表現は、あまり推奨されません。
なぜなら、事実として本当にあなたが移したかどうかは、医学的に証明できないからです。
相手も「いや、電車で貰ったかもしれないし……」と反応に困ってしまいます。
スマートな伝え方の例
もし、自分が風邪を引いた直後に相手も体調を崩した場合は、以下のように伝えるとスマートです。
- 「私の風邪の影響でなければよいのですが、大変申し訳ありません」
- 「先日は体調が優れない中でお会いしてしまい、ご迷惑をお掛けしました」
このように、「移した」と断定せずに、「配慮が足りなかったこと」を詫びる のが大人のマナーです。
漢字の「移す」を使う機会よりも、こうした遠回しな表現を使う機会の方が多いかもしれません。
風邪をうつすことに関する豆知識
最後に、風邪にまつわる「うつす・うつる」の豆知識を2つご紹介します。
単なる噂ではなく、医学や法律の観点から正しい知識を押さえておきましょう。
「風邪は人にうつすと治る」は本当?
よく「風邪は誰かにうつすと、自分は治る」と言われますが、これは医学的な根拠のない迷信です。
ウイルスが他人に移動したからといって、自分の体内からウイルスが消えるわけではありません。
迷信その6:風邪とインフルエンザは抗生物質を飲まないと治らない 真相:抗生物質が効くのは細菌感染症のみで、風邪やインフルエンザのウイルスには効かない。
(中略)
しかし、結論をいうと、誰かに風邪をうつすことで自分の風邪が治るという話に、医学的根拠はなく、迷信に過ぎない。
ではなぜ、そう言われるのでしょうか。
一般的に、風邪のウイルスは感染してから発症するまでに数日の潜伏期間があります。
- あなたが風邪を引く(ウイルス排出のピーク)
- その時期に周囲へウイルスをばら撒く
- 数日後、あなたの風邪が治りかける
- ちょうどその頃、潜伏期間を終えた相手が発症する
このタイミングが重なるため、「私が治ったのは、あの人にうつったからだ」と錯覚しやすいのです。
偶然の一致にすぎませんので、信じないようにしましょう。
わざと風邪をうつすと犯罪になる?
もし、自分がインフルエンザなどの感染症にかかっていることを知りながら、わざと他人にうつそうとして咳をかけたりした場合、どうなるのでしょうか。
過去の判例や法律の解釈としては、「傷害罪」に問われる可能性 があります。
ウイルスを用いて他人の生理機能を害する行為は、暴行によって怪我をさせるのと同じだとみなされるからです。
傷害罪は他人の身体の生理的機能を毀損するものである以上、その手段が何であるかを問わないのであり、本件のごとく暴行によらずに病毒を他人に感染させる場合にも成立するのである。
(最高裁判所昭和27年6月6日付判決) 出典:病気を人にうつしてしまったら犯罪か? – デイライト法律事務所
もちろん、日常的な風邪で即逮捕されることはまずありませんが、「うつしてもいいや」という開き直った態度は、道義的にも法的にも問題があることは覚えておきましょう。
まとめ
「風邪をうつす」の漢字について解説してきました。
今回のポイントを整理します。
- 正解は「移す」
ウイルスが移動するイメージ。 - 「写す」「映す」は間違い
コピーや投影の意味なので使わない。 - 「伝染る」「感染る」は当て字
親しい間柄でのみ使用し、ビジネスでは避ける。
日本語には多くの同音異義語がありますが、それぞれの漢字が持つ本来の意味(移動、複写、投影など)を理解していれば、迷うことはありません。
正しい「移す」という漢字を使って、知的でスマートな文章作成を心がけてください。
記事全体の要点まとめ
- 風邪をうつすの正しい漢字表記は「移す」である。
- 「移す」はウイルスが人から人へ「移動」する意味を持つ。
- 「写す」はコピー、「映す」は投影を意味するため誤り。
- 「遷す」も同義だが、現代では常用外であり一般的ではない。
- 「伝染る」「感染る」は当て字であり、公用文ではNG。
- 漫画『伝染るんです。』の影響で当て字が広まった経緯がある。
- ビジネスシーンでは「移す」と断定する表現は避けるべき。
- 「私の影響でなければよいのですが」と気遣うのがマナー。
- 「風邪をうつすと治る」は医学的根拠のない迷信である。
- 感染と発症のタイムラグが、迷信を生む原因となっている。
- 故意に病気をうつす行為は、傷害罪に問われるリスクがある。
- 正しい漢字とマナーを使い分け、円滑なコミュニケーションを。

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