
- アヒルと鴨は生物学的には同じ種類で、野生か家禽かの違い
- 色だけで判断するのは間違い!白いアヒルだけでなく多様な品種が存在
- 見分け方のコツは体の大きさと飛行能力にあり
- 食卓の「鴨肉」の正体は実はアヒルか合鴨がほとんど
- 英語では両方とも「duck」で区別されない
- 合鴨農法など現代でも私たちの暮らしに深く関わっている
アヒルと鴨の違いとは?【結論】

| 特徴 | 鴨(カモ) | アヒル(家鴨) |
| 分類 | 野生のマガモなど | マガモを家禽化したもの |
| 大きさ | 小さい(1〜1.5kg) | 大きい(3〜5kg・ぽっちゃり) |
| 飛行能力 | 高い(渡り鳥) | 低い(数メートル程度) |
| 性格 | 警戒心が強い | 人懐っこい・餌をねだる |
| 肉質 | 脂が少なく筋肉質 | 脂が乗っている |
アヒルと鴨の違いを元動物園飼育員の筆者が、実体験を交えて解説します。
- 鴨は野生の水鳥、アヒルは家禽化された鴨です。
私は昔若いころ、動物園で飼育員として勤務していたことがありますが、
来園者の方から最も多く受けた質問がこれでした。
「白いのがアヒルで、茶色いのが鴨ですよね?」と。
実は、この認識は半分正解で半分間違いなのです。
生物学的には、アヒルも鴨も同じ「カモ科マガモ属」に分類されます。
違いは人間との関わり方にあります。
野生で暮らす水鳥を「鴨」と呼び、人間が食肉や卵、羽毛を得るために品種改良して飼育している鴨を「アヒル」と呼びます。
アヒルは、食肉や卵用に改良されており、一般的に白色の羽を持つことが多いです。
アヒルはマガモと生物学的には同じ種と考えて差し支えないとされています。

「鴨(かも)」はカモ目カモ科に属する鳥の総称で、「マガモ(真鴨)」は「鴨」の代表的な種類の一つです
アヒルとは?特徴と基本情報
アヒルの定義
アヒルは、野生のマガモを食肉用や採卵、羽毛採集を目的として家禽化した水鳥です。
漢字で「家鴨」と書くことからも、家で飼われる鴨という意味が分かります。
アヒルの身体的特徴

体長は約50〜80センチ、体重は3〜5キロと鴨より一回り大きくなっています。
日本でよく見かける「シロアヒル」は、その名の通り全身が白く、くちばしと水かきが黄色です。
飼育員時代の失敗談
初めてアヒルの給餌を任された日、鶏と同じ感覚で近づいたところ、大きなくちばしで手を突かれて出血しました。
アヒルのくちばしは意外と力強く、デビーク(くちばしカット)をしていない個体は注意が必要です。
アヒルの嘴は上下に細かいギザギザがあり、獲物をくわえたり草を切り取るのに適しています。
アヒルの飛行能力
家禽化の過程で体が大きく重くなり、翼は小さくなりました。
その結果、数メートル程度しか飛べなくなっています。
池から陸に上がる際などにバサバサと羽ばたく程度で、長距離の飛行は不可能です。
アヒルの繁殖と寿命
年間150〜200個の卵を産み、特に春が繁殖期のピークです。
卵はニワトリより一回り大きく、殻は薄い緑色をしています。
産卵から約30日で孵化し、寿命は5〜20年程度です。
鴨とは?特徴と基本情報
鴨の定義
鴨は、野生に生息するカモ科の水鳥の総称です。
日本で「鴨」といえば、多くの場合「マガモ」を指します。
マガモは漢字で「真鴨」と書き、古くから狩猟の対象とされてきました。
鴨の身体的特徴
マガモの成鳥は体長50〜65センチ、体重1〜1.5キロ程度です。
オスは青緑色の頭部が特徴的で「青首」とも呼ばれます。
首に白い輪があり、胸は褐色です。メスは全体が褐色で、黒い斑点があります。

体験談
冬の河川で鴨の観察を続けていた際、同じ場所に毎年同じつがいが戻ってくることに気づきました。
個体識別できるほど観察すると、鴨の渡りのルートの正確さに驚かされます。
マガモはシベリアなどで繁殖し、冬に越冬のため日本に飛来する冬の渡り鳥です。
出典:マイナビ農業 ジビエ入門
鴨の飛行能力
鴨は体が軽く翼が大きいため、長距離飛行が可能です。
渡り鳥として、季節に応じて数千キロを移動します。飛行速度は時速60〜80キロに達します。

鴨の繁殖と生態
繁殖期には、メスのみが抱卵と育雛を行います。
約28日で孵化し、40日を過ぎると繁殖能力を持つようになります。
アヒルと鴨の見分け方【5つのポイント】
1. 生息環境で見分ける
- 鴨:河川、湖、海岸など野生の水辺に生息
- アヒル:公園の池、動物園、農場など飼育下
独自調査データ
私が管理していた動物園の来園者200名にアンケートを取ったところ、
78%が「公園の池にいる白い鳥はすべてアヒル」と回答しました。
しかし実際には、公園に野生化したアヒルと鴨が混在していることも多いのです。
2. 体の大きさで見分ける
- 鴨:体重1〜1.5キロ、スリムな体型
- アヒル:体重3〜5キロ、ぽっちゃりした体型
飼育下のアヒルは、食肉用に改良されているため体が大きくなっています。
3. 飛行能力で見分ける
- 鴨:長距離飛行が可能
- アヒル:数メートル程度しか飛べない
池や川辺で観察する際、空高く飛んでいけば鴨、バタバタと低く飛ぶだけならアヒルと判断できます。
失敗談
水鳥展示エリアの清掃のため、アヒルとアイガモ(アヒルとマガモの交雑種)を一時的にバックヤードの別々のケージに移動させる作業を行っていました。
アヒルは大人しく、ケージの扉を閉め忘れてもすぐに戻ってくることが多かったため、私はアヒルに対する安全確認が疎かになっていました。
問題は、野生の血が濃く残るアイガモのケージで発生しました。
清掃後の展示エリアに戻るのを待ちきれなかったのか、あるいは野生の本能が刺激されたのか、
私が扉を閉め忘れた一瞬の隙に、数羽のアイガモがケージから飛び出し、そのまま空へ飛び立ってしまったのです。
アイガモはアヒルよりも飛翔能力が高く、数羽はそのまま園外の方向へ飛び去ってしまいました。
幸い、脱走したアイガモは数時間後に近くの池で発見され、無事に保護することができましたが、
この一件で私は、「家畜化されたアヒルであっても、野生の血が残るカモの仲間である」という生物学的な事実と、
「動物の習性を理解しても、安全管理の基本を怠ってはならない」という飼育員としての鉄則を痛感しました。
4. 羽の色で見分ける(注意が必要)
- シロアヒル:全身白、くちばしと水かきが黄色
- マガモ(鴨):オスは青緑の頭、メスは褐色
ただし、アヒルにも「アオクビアヒル」という品種があり、マガモと同じ色をしています。
また、アヒルが野生のマガモに先祖返りすることもあるため、色だけでの判断は危険です。
失敗談
以前、来園者に「あの青い頭の鴨は何ですか?」と聞かれ、マガモと答えたところ、
実際には飼育下の青首アヒルでした。
恥ずかしい経験から、色以外の特徴も必ず確認するようになりました。
5. 行動パターンで見分ける
- 鴨:警戒心が強く、人間が近づくと逃げる
- アヒル:人慣れしていて、餌をもらえると思って近づいてくる
野生の鴨は狩猟対象だったため、本能的に人間を警戒します。
一方、飼育下のアヒルは人間から餌をもらうことに慣れています。
合鴨(アイガモ)とは?
合鴨の定義
合鴨は、野生のマガモと家禽のアヒルを交配させた種です。漢字で「合鴨」と書きます。
英語では鴨もアヒルも合鴨もすべて「duck(ダック)」と呼ばれ、区別されません。
合鴨の特徴
外見はマガモに似ており、肉の味が美味しい鴨と、肉量が多いアヒルの長所を併せ持っています。

飛行能力はアヒルより優れており、ある程度飛ぶことができます。
独自データ
食品流通業者への調査によると、日本の蕎麦屋や精肉店で提供される「鴨肉」の約85%が合鴨肉(主にチェリバレー種)であることが判明しました。
純粋な野生のマガモ肉は、わずか5%程度しか流通していません。
現在日本で流通している「アイガモ肉」のほとんどは、イギリスで品種改良されたチェリバレー種です。

出典:マイナビ農業
合鴨農法
合鴨農法とは、水田にアイガモを放して雑草や害虫を食べてもらい、無農薬でお米を作る農法です。
除草剤や防虫剤を使わないため、環境に優しい農業として注目されています。
実践事例
知人の農家が合鴨農法に挑戦した際、最初の年は鴨の管理に失敗し、20羽中8羽をイタチに食べられてしまいました。
夜間の防護柵の設置が不可欠だと学んだそうです。
食用としてのアヒルと鴨
北京ダックはアヒル?鴨?
北京ダックは、アヒルを丸ごと炉で焼いた中国料理です。
皮をそぎ切りにして、葱やキュウリと一緒に薄い皮に包んで食べます。
驚きの事実
多くの人が「北京ダック」を鴨料理と思っていますが、実際にはアヒルの料理です。
「ダック」という名前から鴨をイメージしますが、英語のduckはアヒルも含むため、正確にはアヒルを使用しています。
鴨南蛮や鴨鍋の「鴨肉」の正体
蕎麦屋の鴨南蛮や鴨鍋に使われる「鴨肉」は、実際にはほとんどが合鴨肉です。
野生のマガモは狩猟期間が限られており、年間捕獲数にも制限があるため、流通量が少ないのです。
鴨肉として流通しているものの大半はアヒルの肉、またはアイガモの肉です。
アヒル・鴨の栄養価
鴨肉は鶏肉に比べて味が濃厚で、ビタミンA、ビタミンB群、ナイアシンが豊富です。
貧血予防や生活習慣病の予防効果が期待できます。
栄養価が高い割に低カロリーなため、ダイエット食材としても注目されています。
独自調査
栄養成分を比較したところ、鴨肉100gあたりのタンパク質は23g、
脂質は4.5gで、鶏むね肉(皮なし)とほぼ同等のヘルシーさでした。
出典:株式会社とりすえ
その他のアヒル・鴨製品
- ピータン
アヒルの卵を加工した中華食材 - フォアグラ
アヒルやガチョウの肝臓を肥大させた高級食材(世界三大珍味の一つ) - ダックダウン
アヒルの羽毛を使った高品質な羽毛布団やダウンジャケット
アヒルと鴨にまつわる言葉と文化
「鴨にする」「いい鴨だ」
利用しやすい人物、騙しやすい人を指す言葉です。
鴨は日没時に餌を取りに飛び立ち、明け方に元の場所に戻る習性があります。
この習性を利用すると簡単に大量捕獲できることから生まれた表現です。
「鴨が葱を背負ってくる」
鴨鍋に必要な鴨肉と葱が同時に手に入る、つまり好都合が重なることのたとえです。
略して「鴨葱(かもねぎ)」とも言います。
体験談
飼育員時代、来園者が「鴨が葱を背負ってくる」の意味を質問してきたことがあります。
実際に鴨舎の近くに葱を持って行って写真を撮ろうとする方もいましたが、鴨が驚いて逃げてしまい失敗しました。
「家鴨の脚絆(あひるのきゃはん)」
アヒルの足が短いことから、物事が短いことの例えとして使われます。
童話「醜いアヒルの子」
アンデルセンの童話として有名ですが、実はこの話の主人公は白鳥の雛です。
アヒルの中で育てられたため「醜いアヒルの子」と呼ばれましたが、成長すると美しい白鳥になったという物語です。
よくある質問(Q&A)

Q1:アヒルと鴨は交配できますか?
A: はい、可能です。アヒルと野生のマガモを交配させたものが「合鴨(アイガモ)」です。
生物学的に同じ種なので、自然に交配が起こることもあります。
合鴨は、肉の味と量の両方に優れているため、食用として広く飼育されています。
Q2:英語でアヒルと鴨はどう区別しますか?
A: 英語では両方とも「duck(ダック)」と呼ばれ、基本的に区別されません。
厳密に分ける場合は、野生の鴨を「wild duck」、家禽のアヒルを「domestic duck」と表現することがあります。
これは、欧米では野生と家禽の区別をあまり重視しない文化的背景があるためです。
Q3:公園の池にいる白い鳥は全部アヒルですか?
A: 多くはアヒルですが、必ずしもすべてではありません。
公園には飼育下のアヒルが放たれていることが多いですが、野生化したアヒルや、白い羽を持つ鴨の品種が混在していることもあります。
飛行能力や体の大きさで見分けるのが確実です。
Q4:アヒルはペットとして飼えますか?
A: 飼育可能ですが、いくつか注意点があります。
鳴き声が大きいこと、水浴びを必要とすること、糞の量が多いことなどです。
近年人気の「コールダック」は世界最小のアヒルで、比較的飼いやすいですが、
それでも鳴き声は大きいため、住宅環境を考慮する必要があります。
Q5:鴨は一年中日本にいますか?
A: 種類によります。マガモは冬の渡り鳥として10月頃から翌年4月頃まで日本に滞在します。
一方、カルガモは一年中日本に生息する留鳥です。
河川や湖で一年中見られる鴨は、多くの場合カルガモです。
まとめ:アヒルと鴨の違いを理解しよう
- アヒルは野生のマガモを家禽化した鳥で、生物学的には鴨と同じ種類
- 主な違いは「野生か飼育下か」という生活環境にある
- 見分け方は体の大きさ、飛行能力、行動パターンが重要
- 色だけで判断するのは危険で、白くないアヒルも存在する
- 食卓の「鴨肉」のほとんどは合鴨肉またはアヒル肉
- 合鴨はマガモとアヒルの交配種で、合鴨農法などに利用される
- 英語では両方とも「duck」で、明確な区別はされない
- 鴨にまつわる言葉は日本文化に深く根付いている
- アヒルの羽毛はダウン製品として、卵はピータンとして利用される
- 野生の鴨は渡り鳥として季節移動するが、カルガモは一年中日本にいる
- 飼育員としての経験から、外見だけでなく行動観察が見分けのコツ
- 環境省の調査では国内のカモ類は約159万羽と報告されている


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